今回は非鉄大手5社の一角である三菱マテリアルについて解説していきます!
非鉄金属業界全体について解説している記事がありますので、そちらを先に読んでいただける幸いです!
→ 非鉄金属業界研究

1.基本情報

社名三菱マテリアル株式会社
本社東京都千代田区丸の内三丁目2番3号
創業1871年(明治4年)
設立1950年(昭和25年)
資本金119,457百万円 (2022年3月末現在)
売上高連結 1,811,759百万円 (2022年3月期)
従業員数連結 23,711人
単体 6,208人 (2022年3月末現在)
P/L(百万円)2019年度2020年度2021年度
売上1,516,1001,485,1211,811,759 
売上総利益190,662172,349208,801 
営業利益37,95226,56752,708 
経常利益49,61044,52776,080 
当期純利益−69,30830,77752,614 
ROE4.5%7.70%
ROA1.20%2.10%
純利益率1.60%2.50%
売上高経常利益率3.27%3.00%4.20%
時価総額290,031337,607279,964
自己資本比率26.60%26.80%27.50%

三菱マテリアルの基本情報になります。
売上高・従業員数ともに業界トップで最大規模を誇っています。2019年度は赤字だったものの、2020、21年は黒字化に成功しており、売上・利益ともに前年度と比べ大幅に増加しています。
ただ自己資本比率が少し低い点が気がかりです。また利益率も住友金属鉱山やJX金属と比べると低く、高収益体質とは言い難いです。

2.事業内容

三菱マテリアルは①高機能製品カンパニー、②金属事業カンパニー、③加工事業カンパニー、④再生可能エネルギー事業、⑤セメント事業の5つから成っています。

非鉄大手5社の中では最も広い事業領域を持っています。
またカンパニー制を採用していることも特徴です。

カンパニー制とは?
企業内の各事業部を独立した会社に分けるといった社内分社化の一種。独立採算制を採用しており、各カンパニーに大幅な権限委譲しているのが特徴です。

①高機能製品カンパニー
伸銅品や銅合金を扱う銅加工事業と機能材料や電子デバイスなどを扱う電子材料事業から成っており、現代の情報化社会を支えている。

②金属事業カンパニー
銅鉱山へ投資し、操業運営する鉱山事業と銅製錬やスクラップから有価金属を回収するリサイクルを手がける精錬事業から成っており、三菱マテリルの中核事業である。

③加工事業カンパニー
超硬工具という特殊加工品を扱っており、金属加工や部品加工の工具に使われている。自動車や航空機、医療機器等で使用される金属部品・複合材料を加工するために必要で、幅広い業界を影で支えている。

④再生可能エネルギー事業
地熱発電や太陽光発電、水力発電など再生可能エネルギー分野の発電所を運営しており、持続可能な社会・脱炭素化社会の実現に寄与している。

⑤セメント事業
2022年4月に三菱マテリアルのセメント事業と宇部興産のセメント事業を統合し、UBE三菱セメント株式会社を設立。同社がセメント事業を手掛けており、我々の生活基盤を支えている。

3.各事業の解説・特徴

三菱マテリアルの5つの事業の特徴や強みについてそれぞれ解説していきたいと思います。

①財務分析

セグメント別売上高(億円)
2019年度2020年度2021年度
高機能製品3,6313,4454,691 
金属5,0445,0737,748 
再生可能エネルギー266256170
加工1,3841,1191,282 
セメント2,4422,1322,078
その他2,3952,1962,148
セグメント別経常利益(億円)
2019年度2020年度2021年度
高機能製品44.161.9169 
金属事業275329502 
環境・エネルギー事業31.231.238.9 
加工事業62-7.68145 
セメント事業15361.81.08
その他12.893.765.5

注目ポイント

金属高機能製品が売上高の大半を占める
・各事業の売上、利益の増減要因
高機能製品
自動車向けの銅加工品、半導体関連製品向けの電子材料の需要増により、売上高、経常利益ともに大幅に増加
金属
各社同様銅価格の上昇と銅生産量の増加により、増益
再生可能エネルギー
売上高については株式会社ダイヤモンドコンサルタントが連結から外れたため、減少
しかし経常利益については原子力関連の案件で高収益の受託業務が増加したことにより、増益
加工
赤字計上していた株式会社ダイヤメットとその他子会社3社が連結から外れたため、前年度の赤字を回復
また主力製品である超硬工具の需要が国内外で需要が増加した影響により、大幅な増益となった
セメント
国内では東北や中国地方の災害復旧工事の需要が減少し、電力などのエネルギーコストが増加したことも影響し、売上利益ともに減少した。 海外では生コンクリートの販売価格が上昇したものの、昨今のドライバー不足により、販売量が減少した。また国内同様電力などのエネルギーコストの増加や輸送コストの増加により、操業コストが増加し、減益につながった。

※ダイヤモンドコンサルタントは建設業のコンサル会社で2021年2月に三菱マテリアルが株式を譲渡したことにより、親子関係解消
※ダイヤメットは自動車部品向けの粉末治金や焼結製品を提供している会社で2020年9月に投資ファンドに株式譲渡し、親子関係解消

高機能製品カンパニーの強み・特徴

銅加工事業
・精錬された電気銅を原材料に様々な形状の合金や伸銅品を生産している
・伸銅品は国内トップシェアを誇る
・2020年に伸銅品国内生産トップシェアを誇る三菱伸銅株式会社を合併し、銅加工業界を牽引している

電子材料事業
・機能材料、電子デバイス、化成品、電線、シリコンの5つが主体となっており、低アルファ線はんだをはじめ世界トップシェアを誇る製品が複数ある
低アルファ線はんだは半導体においてはんだから発生するアルファ線を起因とする誤作動を軽減させる
・今後は半導体関連及びEVなどの次世代自動車部材へ注力していく模様

金属事業カンパニーの特徴・強み

・現在はカナダやペルーに4つの鉱山権益を保有している
・銅精錬だけでなく、都市鉱山と呼ばれるE-scrapから有価金属を回収するリサクルを手掛ける
・環境負荷が低い独自の精錬方法三菱連続製銅法が特徴
・E-scrapの処理能力は世界最大規模で年間16万トンもの廃基板を処理することができる

加工事業カンパニーの特徴・強み

超硬工具が主力製品
国内トップシェア世界シェア3位を誇り、高い技術力を持っている
海外売上高比率も2019年時点で60%を超えており、2030年には75%を目指す
・原材料でレアメタルのタングステンのリサイクルにも取り組み、使用済み超硬工具を回収することで独自のサプライチェーン構築に注力している
・精密加工部品を必要とする航空分野医療分野に注力していく模様

超硬工具とは
炭化タングステンの粉末とコバルトを焼き固めた合金が原材料
硬度はダイヤモンド、セラミックに次ぐ硬さを誇り、耐摩耗性能に優れている
用途は金属加工や部品加工の工具に使われており、旋削や穴あけなどの工作機械に組み込まれる

再生可能エネルギー事業の特徴・強み

・地熱発電や太陽光発電、水力発電など再生可能エネルギー分野の発電所を運営
・特に地熱発電に強みを持っており、調査、掘削、設計・建設、運転までの一貫した総合力を強みにしている
・2019年には電源開発株式会社と共同出資で秋田県湯沢地区に設立した大規模地熱発電所が運転開始した
・リサイクル工場を家電メーカーと共同で設立し、家電リサイクル処理量は国内トップである
・他にも原子力分野の放射製廃棄物処理食品廃棄物のバイオガス発電プラントの操業など幅広く手がけている

セメント事業の特徴・強み

・2022年4月に三菱マテリアルのセメント事業と宇部興産のセメント事業を統合し、UBE三菱セメント株式会社を設立
・出資比率は三菱マテリアル50%宇部興産50%の構成
・売上高は約5000億円で出資比率に応じて、配分されている
国内シェアは3位で、セメント・生コン事業以外にも廃棄物処理や石炭事業やバイオマス発電、石炭火力発電をはじめとした電力事業も手がけている
石灰石鉱山を保有しており、石灰石を原料としたマグネシウム関連製品や防虫剤、化粧品などの生活関連製品など幅広い製品を生産・販売

4.福利厚生

福利厚生についてまとめていきます。

年間休日日数126
有給休暇11日~22日(4月入社時に11日付与、その後毎年1月に勤続年数に応じて15日~22日付与)
寮・社宅全国各地の事業所に独身寮・社宅を完備
育児出産休暇、育児休暇 など
介護介護休業 介護休暇 など
その他自己啓発制度、メンター制度 など

注目ポイント

・金融機関よりも高い利率の社内預金制度あり
・厚生労働大臣から子育てサポート企業として認定される「くるみん」を2015年に取得、2016年には女性の活躍推進に関する状況等が優良な企業として認定される「えるぼし認定」を取得
・新入社員には配属先の先輩が「サポーター」として就くことになっており、OJTでキャリアアップのサポートをしてくれる

5.長期ビジョン・求める人物像

三菱マテリアルの長期ビジョン・求める人物像を紹介します。
またこれらを基に学生がアピールすべき点を解説していきます。

長期ビジョン:「ユニークな技術により、人と社会と地球のために新たなマテリアルを創造し、持続可能な社会に貢献するリーディングカンパニー」

求める人物像

・目まぐるしい社会変化の中、事業環境に適応し、自律的に課題回解決しながら創造的に仕事をしていける方
・コミュニケーションをとりながら、チームで仕事をしていける方

もちまる体験談・ワンポイントアドバイス

三菱マテリアルは長期的な全社戦略としてDX化戦略などの事業競争力の追求や新製品・新事業の創出、既存事業のポートフォリオ最適化を掲げています。事業別売上・利益実績を見ると安定的に利益を出している事業とそうでな事業の差が大きく、収益的な問題が背景にあることも関連しているでしょう。そのため、求める人物像にもあるとおり、既存の枠組みから課題や疑問を抱き、解決に導いたり、その解決法を周囲の人間と協力して創出したエピソードがあると良いでしょう。それに加えてなぜ自分が自律的に課題を見出すような上昇志向の人間になったのか性質の源泉を述べるとより良いです。DX化の推進など業務改善経験なども当てはまるでしょう。現在三菱マテリアルが直面している課題や目標を成し得る人材だとアピールして、内定を勝ち取りましょう。

6..選考フロー

最後は選考フローについてです。

事務系 : ES・Webテスト→1次面接→2次面接→最終面接 ※2次面接から志望部署の人事が登場
技術系 : ES・Webテスト→1次面接→2次面接→最終面接

もちまる体験談・ワンポイントアドバイス

三菱マテリアルはカンパニー制を採用しており、書類選考段階からどのカンパニーに行きたいか志望理由を問われます。また職種別採用も実施しており、どの職種を志望するか、その理由も明確に準備する必要があります。なお、基本カンパニー間及び職種の異動はなく、配属カンパニー・職種でその道を歩むことになります。
1.ESで志望部署を2〜3つ挙げる
2.ESにて志望した部署の社員が面接に同席する
→本人の希望や適性が考慮され、社員により1つの部署が決定される
3.最終面接では1つの部署に絞られた状態で選考を受ける
4.原則選考合格次に配属予定の部署も連絡される

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