今回は電線御三家の一角である住友電気工業について解説していきます!
非鉄金属業界全体について解説している記事がありますので、そちらを先に読んでいただける幸いです!
→ 非鉄金属業界研究

1.基本情報

商号住友電気工業株式会社
本社所在地大阪市中央区北浜4-5-33(住友ビル)
創業1897(明治30)年4月
資本金99,737百万円
売上高 (2022年3月期)連結 3,367,863百万円
単独 1,305,756百万円
従業員数連結 281,075
単独 6,651人
社長井上 治
P/L(百万円)2020年度2021年度
売上2,918,5803,367,863
売上総利益531,343573,944
営業利益113,926122,195
経常利益114,072138,160
当期純利益68,788109,702
ROE3.50%5.40%
ROA1.70%2.50%
純利益率2.36%3.26%
経常利益率3.91%4.10%
自己資本比率48.20%46.50%
時価総額1,293,0541,140,185

住友電工は1890年代、当時は高級品とされていたケーブルの国産化を目的に、電線事業を開始銅線、硅銅線の製造から始まり、国産初の高圧地下送電線ケーブルの製造、世界最長の海底ケーブルの製造・敷設にも成功するなど、日本の産業の発展を支える役割を担いました。また世界40カ国以上415の関係会社を持ち、海外売上高比率も6近い、グローバル企業である。

財務的な面では売上高は3兆超えと業界トップの売上を誇るとともに、売上・利益ともに右肩上がりで、純利益については約1.6倍と大きく伸びている。自己資本比率も50%近くあり、財務体質は比較的健全である。
ただ純利益率・経常利益率は5%以下と少し低い水準になっている。

2.事業内容・特徴

住友電工は①自動車、②情報通信、③エレクトロニクス、④環境・エネルギー、⑤産業素材の5事業から成っています。
各事業の内容や特徴、財務分析を含めて解説していきます。

①自動車

・主に自動車に使われる電気部品を扱っており、ワイヤーハーネスについては連結子会社の住友電装が扱っている
売上の大部分を占めており、住友電工の中核事業とも言える
・電気部品だけでなく、車載システムや交通管制システムなどの公共システムも扱っており、次世代自動車に向けた事業展開をしている

代表的な製品

・ワイヤーハーネス
自動車の電源や情報を伝送する役割を持っており、人間に例えると血管や神経も相当する
住友電工製のワイヤーハーネスは世界シェア25%と、世界の自動車の4台に1台は住友電工のワイヤーハーネスが使われている

・EV充電コネクタ
EV車やプラグインハイブリッド車を充電する際に接続するためのコネクタ

・ECU
自動車の電装化に伴い、様々な機器が搭載されており、それらを安全に便利に機能させるために制御する電子機器部品

②情報通信

光ファイバーやコネクタ、クロージャーなどの光配線接続製品・伝送デバイスを扱っている

代表的な製品

・光ファイバ、光ケーブル
人間の髪の毛ほど細いガラスでできており、中で走る光信号で数十キロ先まで伝搬させることができる高機能伝送媒体光ファイバーケーブルは伝送損失・伝送容量が業界トップ

・光デバイス、電子デバイス
高速光通信システム装置に使われてり、大容量・高速光通信をサポートする
光デバイス・電子デバイスについては連結子会社の住友電工デバイス・イノベーションが扱っている

③エレクトロニクス

自動車、情報端末、家電などに組み込まれている素材・配線材・部材を扱っている

代表的な製品

・フレキシブルプリント回路
スマートフォンなど小型電子デバイスの回路基板で、非常に柔軟性が高いため、世界初の折り畳み式スマートフォンで採用された

・PTFE多孔質材料
半導体、液晶、医薬品、食品など、濾過膜として幅広く使われている
また同製品を水処理膜に応用し、設計からメンテナンスまでワンストップの水処理システムサービスを展開

④環境・エネルギー

・電力の安定的供給をに担う電力用電線や再生可能エネルギーのマネジメントシステムなどを手がける
・海底ケーブル事業では、国内外で複数のプロジェクトを完遂・進行しており、初製品の400kV直流絶縁ケーブルはベルギー・イギリス間の再生可能エネルギープロジェクトに採用、 また世界最高電圧の525kVの送電ケーブルシステムの開発に成功し、大容量送電の長期安定化を目指している
レドックスフロー電池はバナジウムなどの金属の酸化還元反応を応用した蓄電池で、安全性に優れているため、再生可能エネルギー系統設備の安定化が期待されている
・レドックスフロー電池の市場規模は年間20%以上成長すると予測されており、住友電工は2024年に米国にて新工場の設立を計画している
・またレドックスフロー電池以外にも太陽光発電装置も手がけており、エネルギーマネジメントシステムと組み合わせ、大規模畜発電システムとして提供している

⑤産業素材

・金属加工や部品加工の工具に使われており、旋削や穴あけなどの工作機械に組み込まれる切削工具や自動車部品などに使われる高精度な焼結部品、 ビルや橋などの大型コンクリート建造物の補強材などを扱っている
炭化タングステンの粉末とコバルトを焼き固めた超硬素材を用いた切削工具は世界中のモノづくりを支えており、 住友電工は世界シェア5を誇る
・焼結部品は金属を粉末にして、焼き固めた部品のことで、自動車だけでなく事務機器、家電製品など幅広く使われている、住友電工は2019年にヨーロッパの焼結部品メーカー2社を買収し、ヨーロッパへの販路拡大に尽力している

⑥財務分析

セグメント別売上高(億円)
2020年度2021年度
自動車16,02017,542
情報通信2,2462,392
エレクトロニクス2,5262,952
環境エネルギー6,3428,334
産業素材3,0253,279
セグメント別利益(百万円)
2020年度2021年度
自動車48,19812,264
情報通信24,34323,398
エレクトロニクス10,04719,825
環境エネルギー25,02544,024
産業素材6,66023,024

注目ポイント

・自動車関連が売上の大半を占めているが、利益で見ると半分以下にとどまっている
・他の4事業は売上・利益ともに堅調に伸びている
・自動車関連事業については部材価格高騰や物流費の増加、半導体不足による自動車の減産が相次いだことにより、大幅な利益縮小となっているが、エレクトロニクス環境エネルギー産業素材分野大幅な増益により、自動車分野の減益をカバーすることができている。

3.福利厚生

福利厚生についてまとめていきます。

年間休日日数121日
有給休暇20日
寮・社宅各地に社宅・独身寮を完備、家賃補助制度あり
育児育児休業、出産・育児サポートプログラム、保活コンシェルジュ など
介護介護休暇、介護短時間勤務、介護支援サービス など
その他インフルエンザ予防接種補助、福利厚生ポイント制度

注目ポイント

①出産・育児・ダイバーシティ関連

・休暇制度や時短勤務の他に休憩時間とは別に1日2回各30分育児時間を申請できたり、 託児所の運営や子供を保育所に預けるための活動に関する情報提供を担う保活コンシェルジュなど、 様々なサポートをしている
・女性の働きやすさを重視しており、「子育てサポート企業認定(くるみん認定)」や女性活躍推進に優れているなでしこ銘柄認定やえるぼし認定を受けている
・女性の育児休業復帰率は100%であり、男性の育児休暇取得率も63.3%と高水準
・女性マネージャーは2016年から5年間で4倍にも増えている

②社宅・休暇関連

・従業員1000人以上の企業の平均有給取得日数11.7日に対し、18.5日と高い取得日数
・年間休日日数121日、年次有給休暇日数20日
・独身寮、社宅、研修センターなど各種施設を完備、家賃補助もあり

4.長期ビジョン・求める人物像

住友電工の長期ビジョン・求める人物像を紹介します。
またこれらを基に学生がアピールすべき点を解説していきます。

長期ビジョン:「Glorious Excellent Company」
※Glorious:「住友事業精神」「住友電工グループ経営理念」という精神的基板を具現化したあるべき姿
※Excellent:具体的・定量的な事業目標達成の意

「住友事業精神」

・萬事入精:何事に対しても誠心誠意を尽くす人であれ
・信用確実:何よりも信用を重んじること、すなわち「常に相手の信頼に応える
・不趨浮利:常に公共の利益との一致を求め、浮利を追い、軽率、粗略に行動してはならない

「住友電工経営理念」

住友電工グループは
顧客の要望に応え、最も優れた製品・サービスを提供します
技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます
社会的責任を自覚し、よりよい社会、環境づくりに貢献します
高い企業倫理を保持し、常に信頼される会社を目指します
自己実現を可能にする、生き生きとした企業風土を育みます

求める人物像

・自ら考え、自ら行動できる人
創造力探究心のある人
グローバルに活躍できる人

もちまる体験談・ワンポイントアドバイス

住友電工は創業1897年と住友の中でも長い歴史があります。また世界40カ国以上415社の関係会社を持ち、海外売上高比率6割を持つグローバルカンパニーであり、今後はエネルギー・情報通信・モビリティに注力していくと長期ビジョンでは語っています。そのため、学生はまず海外志向をアピールするべきでしょう。事実、住友電工では入社4年目までの社員の約4割が海外出張・駐在を経験しており、語学スキル(TOEIC)や留学経験は最低限持っておく必要があるでしょう。また注力分野については事業環境の変化が激しく、求める人物像でも「自ら考え、自ら行動できる人」が挙げられてることから、コロナ禍の変化の中で成し遂げたことや自ら変化を起こしたエピソードなどがあると良いでしょう。さらに住友電工は歴史が長く、住友の事業精神を重宝しているようなので、志望動機に説得力が欠けていると感じたら、住友の事業精神を体現したエピソードや自分の強みを挙げ、共感したからという動機を入れてみても良いと思います。採用HPでは求める人物像の詳しい説明が記載されているので、住友事業精神・経営理念と併せてチェックしておきましょう。

5.選考フロー

最後は選考フローについてです。

事務系 : ES・Webテスト→リクルーター面談(4回)→人事面談→最終面接
技術系 : ES・Webテスト→1次面接→リクルーター面談→最終面接

もちまる体験談・ワンポイントアドバイス

選考フローにリクルーター面談が組み込まれているため、実際に最前線で働く社員にしか聞くことができない質問をしてみましょう。特に事務系は4回もリクルーター面談があるため、事業内容や製品、仕事内容の具体的なイメージを掴んで、どの部署でどんな仕事をしたいかを明確にしておきましょう。またリクルーターは人事ではなく、実際に顧客や株主などのステークホルダーと関わって仕事をしているため、業界の課題や動向など、下調べをしておくと良い評価がもらえるかもしれません。

今回は電線御三家の一角である住友電気工業について紹介しました!
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