今回は非鉄大手5社の一角である住友金属鉱山について解説していきます!
非鉄金属業界全体について解説している記事がありますので、そちらを先に読んでいただける幸いです!
→ 非鉄金属業界研究
1.基本情報
基本情報 | |
社名 | 住友金属鉱山株式会社(英名: Sumitomo Metal Mining Co., Ltd.) |
本社所在地 | 東京都港区新橋5丁目11番3号(新橋住友ビル) |
創業 | 1590年(天正18年) |
設立 | 1950年(昭和25年) |
資本金 | 932億円 |
従業員数 | 連結 7,202名 |
売上高 | 連結 1兆2,591億円(2021年度) |
税引前利益 | 連結 3,574億円(2021年度) |
事業内容 | 資源開発、非鉄金属製錬、機能性材料の製造および販売、その他 |
住友金属鉱山の基本データになります。創業がなんと1590年と非常に長い歴史を持つ企業です。
売上高も1兆を越えており、業界を代表する企業といえるでしょう。
2.財務分析
P/L(百万円) | 2020年度 | 2021年度 | ランキング |
売上 | 926,122 | 1,259,091 | 4位 |
売上総利益 | 150,876 | 257,794 | |
経常利益 | 123,379 | 357,434 | |
当期純利益 | 98,709 | 298,531 | 1位 |
*ROE | 8.50% | 19.40% | 2位 |
*ROA | 5.00% | 12.40% | |
純利益率 | 10.20% | 22.30% | 1位 |
売上高経常利益率 | 13.32% | 28.39% | |
*時価総額 | 1,313,151 | 1,468,904 | 1位 |
自己資本比率 | 59.06% | 63.71% | 1位 |
*ROA 総資産利益率のことで総資産に対してどれだけ利益を創出できたかを測る指標。一般的に5%を上回ると優良企業だと言われる。
*時価総額 株価と株式数をかけたもので、その企業のある時点での価値を表したもの。
住友金属鉱山の財務データになります。(ランキングは非鉄金属業界10社との比較)
各項目ごとに分析していきたいと思います。
・売上高
前年の9261億円を上回り、大台の1兆円を達成し、業界では4位にランクイン
・経常利益
経常利益についても前年の1233億円を大幅に上回る伸び
・当期純利益
純利益及び純利益率で業界トップを誇り、非常に利益率の高いビジネスモデルを展開している
・時価総額
株価と株式数をかけたもので、その企業のある時点での価値を表したもの。売上高を超える時価総額で、業界トップの企業価値を有する
・自己資本比率
総資本のうち自己資本の割合のことで、高ければ高いほど、他人資本に依存しておらず、安全性の高い経営になる
約68%と高い自己資本比率で、非常に健全な財務体質と言える
このように住友金属鉱山は業界内でもトップクラスの利益率と安全性を誇る企業と言えるでしょう。
3.事業内容
住友金属鉱山は①資源、②精錬、③材料の3つの事業から成っています。
①資源事業
長い歴史の中で培われた鉱山開発・操業の経験・ノウハウを活かし、国内外における鉱山の開発・運営に参画するとともに、鉱山資源確保に向けて新たな優良鉱山を求め、各国でのプロジェクトを推進している。
②精錬事業
創業以来磨き続けてきた製錬技術をもって、回収が難しい低品位鉱石からも高品質な金属・地金を抽出し、安定的に供給するとともに、持続可能な社会の構築に向けて電池のリサイクルなども展開している。
③材料事業
金属素材の加工により、需要拡大が見込まれる二次電池向け正極材などの電池材料やエネルギー・環境と情報通信分野に利用される機能性材料を開発・生産している。
このように住友金属鉱山では3つの事業を展開しており、世界でも類を見ない3事業連携モデルとなっている。
事業競争力・高収益体質の源となっている!
4.各事業の解説・特徴
住友金属鉱山の3つの事業の特徴や強みについてそれぞれ解説していきたいと思います。
①財務分析
セグメント別利益(百万円) | ||||
事業 | 売上高(2020年度) | 売上高(2021年度) | 利益(2020年度) | 利益(2021年度) |
資源 | 1,270 | 1,573 ↑ | 631 | 2,085 ↑ |
精錬 | 6,938 | 9,423 ↑ | 530 | 1,148 ↑ |
材料 | 2,115 | 2,780 ↑ | 105 | 276 ↑ |
まずは財務分析です。注目すべきポイントは以下になります。
・2021年度は売上高、利益ともに右肩上がり
・主な稼ぎ柱は精錬事業だが、2021年度はシエラゴルダ銅鉱山の売却益により資源事業の利益増加
・各事業の売上及び利益増加理由
資源 上述の通り、2021年度はシエラゴルダ銅鉱山の売却益により利益増加
精錬 2021年度は非鉄金属価格が高水準な状態が続いたため、前年度を上回る結果となった
特にニッケルは世界経済の回復ととも上昇傾向が続いた
材料 脱炭素化及び自動車の電動化に伴い、電池材料と粉体材料の需要が堅調に伸びた。
② 資源事業の特徴・強み
・海外で多数の銅鉱山・ニッケル鉱山の権益を保有しており、国内トップクラスの権益量を誇る
・現在カナダ(コテ)にて新たな金鉱山開発プロジェクトも進行中
・モレンシー銅鉱山、セロベルデ銅鉱山は銅産出量トップ5にランクイン
・銅生産量23万トン(世界24位、国内1位)
・ニッケル生産量8.3万トン(国内1位)
保有鉱山権益
国内: 菱刈鉱山(現在国内唯一の商業的操業が行われており、日本最大の金産出量・埋蔵量を誇る)
海外(ニッケル): コーラルベイ、ニッケルアジアなど4つの権益を保有
海外(銅): モレンシー、セロベルデなど7つの権益を保有
③ 精錬事業の特徴・強み
・売上の大部分を占めており、住友金属鉱山の中核事業
・銅、ニッケル、コバルトに強みを持っている
・リサイクル事業も展開しており、世界初リチウムイオン二次電池から銅やニッケルを回収し、再び電池材料として蘇らせる再資源化に成功
東予工場(銅精錬)
・年間45万トンの銅を精錬しており、世界トップクラスの銅生産規模と生産性を誇る
ニッケル工場(ニッケル・コバルト精錬)
・愛媛県新居浜市に位置し、電気ニッケルと電気コバルトを生産する国内唯一の工場
・独自の精錬技術HAPLや高効率な生産方式であるMCLE法で高純度ニッケルを生産している
④ 材料事業の特徴・強み
・電気自動車などに使用される二次電池向けニッケル正極材で世界トップシェアを誇る
・また3事業連携モデルによる独自のニッケルサプライチェーンを築いている
・電池材料やスマートフォンなどの通信端末に使われる結晶材料、電化製品には欠かせない基板材料などで、現代社会を幅広く支えている
電池材料
・水酸化ニッケル
・ニッケル酸リチウム
・三元系正極材 などを扱っている
どの製品も電池のプラス極の材料となる正極材に関連しており、住友金属鉱山では主に車載向けを生産している。
参考
住友金属鉱山「菱刈鉱山」
住友金属鉱山「2021年中期経営計画」
住友金属鉱山「統合報告書2022」
住友金属鉱山「精錬事業」
住友金属鉱山「ニッケル工場(精錬)」
住友金属鉱山「界初、使用済みリチウムイオン二次電池からリチウムを電池材料として再資源化する水平リサイクル技術を確立」
5.福利厚生
福利厚生についてまとめていきます。
基本データになりますが、大手企業ということもあり、かなり充実している印象です!
年間休日日数 | 本社:125日 事業所:107〜117日 |
有給休暇 | 初年度13日 翌年度17日 (最大22日) |
寮・社宅 | 各事業所に寮・社宅を完備、家賃・住宅補助あり |
育児 | 育児休暇、時短勤務、時差出勤、特別休暇等 |
介護 | 介護休業・休暇、介護家族見舞金等 |
その他 | 旧姓使用許可、自発休暇制度、時短勤務制度 |
6.長期ビジョン・求める人物像
住友金属鉱山の長期ビジョン・求める人物像を紹介します。
またこれらを基に学生がアピールすべき点を解説していきます。
長期ビジョン:「世界の非鉄リーダー」を目指す
求める人物像
・良好な人間関係を構築し、チームとして仕事をすすめていくための「協調性」
・顕在化した課題のみならず、組織に潜在する課題を確実に把握する「認識力」
・複雑に絡み合った課題の本質的な原因を見抜き、実効性のある対策を考え抜く「構想力」
・組織および個人で決めたことを着実に行動に移す「実行力」
7.選考フロー
最後は選考フローについてです。
事務系 : ES・Webテスト→1次面接→2次面接→最終面接
技術系 : ES・Webテスト→1次面接→最終面接
非鉄金属業界を代表する住友金属鉱山について紹介しました!
志望動機や企業研究に役立てていただける幸いです。
住友金属鉱山以外のメーカも紹介予定なので、是非ご覧になってください!